熊本地震の特定非常災害指定は遅いのか?

熊本地震による災害が昨日「激甚災害」に指定されたのに続いて、明日には「特定非常災害」に指定される予定だ*1。これにより、仮設住宅の入居期間や運転免許証の有効期間の延長、債務超過に陥った法人の破産手続き開始の留保などの特別措置が行われ、被災者の便宜が図られる。

特定非常災害とは「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律*2に定められる災害。制定の契機となった阪神・淡路大震災のほか、新潟県中越地震東日本大震災の3例のみが過去に指定されている。

そもそも本当に「遅い」のか?

激甚災害指定でもそうだったように、特定非常災害指定についても脊髄反射的に「遅い」とする意見が散見される。

そこで事例はわずかだが簡単に比較してみる。

災害 発災日 閣議決定 公布・施行
阪神・淡路大震災 1995年1月17日 (1996年)12月19日*3 12月26日
新潟県中越地震による災害 2004年10月23日 11月12日 11月17日
東日本大震災 2011年3月11日 3月13日 3月13日
熊本地震による災害 2016年4月14日 4月28日(予定) 4月28日(予定)

東日本大震災は異様に早く指定されているが、新潟県中越地震に比べると熊本地震の指定はやや早い程度で、「遅い」というには根拠が弱すぎると感じる。

結論

とはいえ、特定非常災害指定による数々の措置は発災直後というよりはこれからの復旧・復興の過程で必要になってくるものだ。災害救助法の適用などとはまったく性質が違うので、(激甚災害指定についても言えることだが)「発災から何日以内に指定されるべきか」という議論自体ナンセンスといえるかもしれない。

関連リンク

d.hatena.ne.jp

*1:特定非常災害28日に指定 熊本地震で閣議決定へ - 共同通信 47NEWS

*2:2条第1項「著しく異常かつ激甚な非常災害であって、当該非常災害の被害者の行政上の権利利益の保全等を図り、又は当該非常災害により債務超過となった法人の存立、当該非常災害により相続の承認若しくは放棄をすべきか否かの判断を的確に行うことが困難となった者の保護、当該非常災害に起因する民事に関する紛争の迅速かつ円滑な解決若しくは当該非常災害に係る応急仮設住宅の入居者の居住の安定に資するための措置を講ずることが特に必要と認められるものが発生した場合には、当該非常災害を特定非常災害として政令で指定するものとする。」

*3:事務次官会議決定(1996年12月20日付「朝日新聞」東京本社版朝刊 p.34)